イーサリアムのビーコンチェーン・エクスプローラーは、ネットワークのコンセンサス側を見せてくれるツールです。ブロックを提案し投票するバリデーター、彼らが働くスロットとエポック、そしてそこから生まれる報酬、ペナルティ、出金が表示されます。Etherscanのような通常のエクスプローラーは、トランザクションとアドレスを中心に作られています。一方ビーコン・エクスプローラーは、バリデーターのインデックスと担当業務(デューティー)を中心に作られています。自分でステーキングしている方、ノードを運用している方、あるいは「先週の火曜日にステーキングサービスの報酬が減ったのはなぜか」を知りたいだけの方にとっても、これが必要な道具です。
今でも「イーサリアム2.0エクスプローラー」や「イーサリアムPoSエクスプローラー」で検索する人は少なくありませんが、指しているものは同じです。以下では、ビーコンチェーンとは何か、Pectraアップグレード後のルールに基づいてバリデーターのページの各項目をどう読むか、そして2026年に使う価値のあるエクスプローラーはどれかを説明します。
898,537
アクティブなバリデーター
ファイナライズ済みのビーコン状態。2026年9月24日に当サイトが公開ノードから取得
約4,345万ETH
ステーキング中の実効残高
上記アクティブ・バリデーターの実効残高の合計
22,874
複利型(0x02)バリデーター
Pectraの2,048 ETH上限を選択したバリデーター
ビーコンチェーンとは何か、そして「イーサリアム2.0」が消えた理由
ビーコンチェーンは2020年12月1日のUTC 12:00:23(日本時間21:00:23)に稼働を開始しました。それから2年近く、元のプルーフ・オブ・ワークのチェーンと並行して動き、中身が空のブロックを生成しながら、実際の資金をステークしたバリデーターたちが、実際のトランザクションなしでコンセンサスの予行演習を続けていました。そして2022年9月15日、The Mergeによって2つのチェーンが統合されました。最後のプルーフ・オブ・ワークのブロックは15,537,393、最初のプルーフ・オブ・ステークのブロック15,537,394はビーコンのスロット4,700,013に収まりました。それ以来、イーサリアムのすべてのブロックは、ビーコンチェーンが選んだバリデーターによって提案されています。
イーサリアム財団は2022年初めに「Eth2」「イーサリアム2.0」という呼び名をやめ、「実行レイヤー」(トランザクション、アカウント、EVM)と「コンセンサスレイヤー」(バリデーター、ビーコンチェーン)という言い方に切り替えました。古い名前は検索キーワードや一部のエクスプローラーのブランディングに残っていますが、探索すべき別の「イーサリアム2」ネットワークは存在しません。1つのチェーンを、2つの角度から見ているだけです。プロトコル全体を理解したい方には、ethereum.orgのプルーフ・オブ・ステークの解説が最良の入門資料です。
ビーコン・エクスプローラーで見るスロット、エポック、ファイナリティ
ビーコンチェーン上の時間は、12秒のスロットに区切られています。各スロットでは、ブロックを提案するバリデーターがちょうど1人選ばれます。そのバリデーターがオフラインなら、そのスロットはミス(missed)となり、チェーンは次のスロットを待つだけです。ビーコン・エクスプローラーに空白や「missed」のバッジが表示される一方、通常のエクスプローラーではブロック間隔が少し長く見えるだけなのはこのためです。32スロットで1エポック、約6.4分になります。各エポックの中で、すべてのアクティブなバリデーターは1回ずつアテステーション(投票)を行うよう割り当てられます。
ファイナリティはエポックの境目で決まります。ステークされたETHの3分の2がある「チェックポイント」に投票すると、そのチェックポイントはジャスティファイド(justified)になります。その上に次のチェックポイントがジャスティファイドされると、前のチェックポイントはファイナライズ(finalized)されます。通常であれば約2エポック、12.8分ほどかかります。ビーコン・エクスプローラーはトップページに最新のジャスティファイド・エポックとファイナライズ済みエポックを表示しています。これらの数字が進まなくなったら、ネットワークに問題が起きており、すぐにニュースになるはずです。
スロット番号は、実行データとコンセンサスデータを突き合わせる手がかりとしても便利です。当サイトのライブ・イーサリアム・エクスプローラーは、表示するすべてのブロックとトランザクションについて、ブロックのタイムスタンプからジェネシス時刻を引いて12で割ったスロットとエポックを表示します。たとえば2026年9月24日のタイムスタンプを持つブロックなら、スロットは1,528万を少し過ぎたあたり、エポックは477,000台になります。そのスロット番号をビーコン・エクスプローラーに貼り付ければ、誰が提案したのか、MEVの支払いを含んでいたか、いくつのアテステーションを取り込んだかがわかります。
バリデーターのページを項目ごとに読む
ビーコンチェーン・エクスプローラーでバリデーターのインデックス、公開鍵、デポジット元のアドレスのいずれかを検索すると、バリデーターのページが開きます。各部分の意味を見ていきましょう。
インデックスと公開鍵
公開鍵は、バリデーターの鍵を生成したときに作られる48バイトのBLS鍵(16進数で96文字)です。インデックスは、デポジットが処理されたときにビーコンチェーンが割り当てる番号で、2020年に0から始まり、今では200万を超えています。バリデーターがエグジットした後もインデックスが再利用されることはないためです。エクスプローラーはどちらでも検索できますが、インデックスのほうがはるかに共有しやすいので、ほとんどのダッシュボードや監視ツールはインデックスを使っています。
残高と実効残高
残高(Balance)は、そのバリデーターがコンセンサスレイヤー上で保有しているETHの正確な量で、報酬やペナルティが反映されるたびにエポックごとに更新されます。実効残高(Effective Balance)は、プロトコルが投票の重みづけや報酬計算に使う値です。ETHの整数値で、実際の残高がバッファを超えて動いたときにしか変わらないため、数分おきにちらちら変動することはありません。
2025年5月までは、上限は32 ETHでした。2025年5月7日のPectraアップグレードで導入されたEIP-7251により、新しい0x02「複利型(compounding)」クレデンシャルを持つバリデーターは、最大2,048 ETHまでの実効残高を持てるようになりました。32 ETHを超える報酬は差し引かれて引き出されるのではなく、そのまま報酬を生み続け、大口の運用者は32 ETHのバリデーターを多数1つに統合できます。2026年9月にバリデーター全体をサンプリングしたところ、14,124のアクティブなバリデーターがすでに32 ETHを超える実効残高を持っていました。エクスプローラーでは、バリデーターの履歴に統合(コンソリデーション)イベントが記録され、残高チャートが大きく伸びている形で確認できます。
アテステーション
各バリデーターは毎エポック、チェーンの先頭(ヘッド)、ソース、ターゲットの各チェックポイントに投票するアテステーションを1回行うことになっています。ビーコン・エクスプローラーは、それがどのスロットに取り込まれたかと、取り込みまでの遅延(inclusion delay)とともに一覧表示します。アテステーションを逃すと、得られたはずの報酬とほぼ同じ額の小さなペナルティが科されます。週に数回程度(再起動や短いネットワークの不調)なら普通のことです。長く連続して逃しているなら、ノードが止まっているか、同期がずれています。報酬が減ったときに最初に見るべき場所はここです。
ブロック提案(プロポーザル)
ブロック提案はまれで、価値のある機会です。アクティブなバリデーターが約90万、1スロットにつき提案者が1人なので、32 ETHの個々のバリデーターが提案するブロックは平均で年に数個にすぎません。より大きな複利型バリデーターは、その分だけ高い確率で選ばれます。エクスプローラーは、提案した(または逃した)各スロット、実行レイヤーのブロック番号、手数料受取アドレス(fee recipient)を表示し、MEV-Boostのリレーを追跡しているエクスプローラーなら、どのリレーがブロックを届け、いくら支払ったかも表示します。優先手数料とMEVは実行レイヤー上の手数料受取アドレスに入るため、通常のエクスプローラーでもそのアドレスの履歴に現れます。
同期委員会(Sync Committee)の担当
ランダムに選ばれた512のバリデーターが、256エポック(約27時間)のあいだ同期委員会を構成します。メンバーはすべてのブロックのヘッドに署名し、ライトクライアントが低コストでチェーンを追えるようにします。選ばれることはまれで報酬も大きい一方、署名を逃したときのコストもそれに比例して大きくなります。エクスプローラーには、そのバリデーターが務めた委員会の期間と参加率が表示されます。
ステータス
バリデーターにはライフサイクルがあります。pending(デポジットは確認済みで、アクティベーション待ちの列に並んでいる状態)、active_ongoing、active_exiting(エグジットを要求済み)、exited、そして残高がすべて引き出されると最後にwithdrawal_doneになります。active_slashedやexited_slashedのラベルは、そのバリデーターがスラッシングのルールに違反したことを意味します。エクスプローラーはアクティベーションとエグジットの待ち行列も表示しており、需要次第で数時間から数週間まで伸びることがあります。
出金と出金クレデンシャル:0x00、0x01、0x02
出金クレデンシャル(withdrawal credentials)は、バリデーターのETHがどこへ行けるかを決めるものです。エクスプローラーではバリデーターの詳細欄に表示され、先頭の1バイトから多くのことがわかります。
- 0x00は、初期のころのBLSクレデンシャルです。これらのバリデーターは、所有者が実行レイヤーのアドレスへの一度きりの変更に署名するまで出金できません。2026年9月の当サイトのサンプルでは、まだ8,917のアクティブなバリデーターがこの状態でした。
- 0x01は、実行レイヤーのアドレスを指しています。32 ETHを超える分は自動的にそのアドレスへ差し引かれて送られ(スキミング)、完全にエグジットすると残高全体が送られます。今も圧倒的多数がこのタイプです。
- 0x02はPectraで追加されたタイプで、同じく実行レイヤーのアドレスを指しますが、2,048 ETHに達するまで報酬を複利で積み上げてからスキミングします。
出金そのものはトランザクションではありません。2023年4月12日のShapellaアップグレード以降、プロトコルはインデックス順にバリデーターを巡回し、1ブロックあたり最大16件の出金を対象アドレスに直接入金しています。EtherscanやBlockscoutで出金がトランザクション一覧ではなく、別の「Withdrawals」タブに表示されるのはこのためです。そこには出金インデックス(2026年9月時点でBlockscoutのカウンターは1億4,400万を超えていました)と、出金元のバリデーター・インデックスが表示されます。Pectraでは実行レイヤーからのエグジット(EIP-7002)も追加され、出金アドレスからバリデーターの署名鍵なしでエグジットを要求できるようになりました。これはステーキングプールにとって大きな意味を持っています。
出金がウォレットに届いたかを確認したいときは、実行レイヤーのエクスプローラーで受取アドレスを見てください。イーサリアムのアドレス確認ガイドでは、出金がどこに表示されるのか、なぜトランザクションの総数に含まれないのかを説明しています。
スラッシングとは何か、エクスプローラーでどう表示されるか
スラッシングは、ダウンタイムではなく、証明可能な攻撃行為を罰する仕組みです。違反は3種類あります。同じスロットで異なる2つのブロックを提案すること、同じターゲットに異なる2つのアテステーションを行うこと、そして以前のアテステーションを「囲い込む(surround)」アテステーションを行うことです。現実に起きたスラッシングのほとんどは運用者の事故で、多くは移行作業中に同じ鍵を2台のマシンで動かしてしまったケースです。
罰則は段階的に科されます。まず即時のペナルティが差し引かれ、バリデーターは強制的にエグジットさせられます。Pectra以降、この初期ペナルティは実効残高の4,096分の1で、以前の32分の1よりずっと小さくなりました。約36日間のエグジット期間のうち18日目あたりで、相関ペナルティ(correlation penalty)が科されます。これは同じ時期にどれだけ多くのステークがスラッシュされたかに応じて大きくなります。単独のミスなら軽く済みますが、共通のバグによる大量スラッシングは壊滅的な結果になり得ます。さらにバリデーターは、エグジットするまでアテステーション報酬を失い続けます。
エクスプローラーはスラッシュされたバリデーターを赤で示し、違反を報告したバリデーター(内部告発者として小さな報酬を得ます)を表示し、最近のスラッシングを専用ページにまとめています。ステーキングサービスに委任する前に、そのサービスについても同じ確認をしておく価値があります。
ビーコンチェーン・エクスプローラーの比較
ビーコン・エクスプローラーは実行レイヤー向けのエクスプローラーより数が少なく、それぞれの違いも大きくなっています。2026年9月時点での主な選択肢を比べてみましょう。