NFTとは、「特定のトークンIDが特定のアドレスに属している」と記したスマートコントラクト内の記録です。アートワークも、特性(トレイト)も、フロア価格も、すべてはその記録の周りにあるものにすぎません。イーサリアムのNFTエクスプローラー を使えば、その記録そのものに直接アクセスできます。誰がトークンをミントしたのか、どのウォレットがどれくらいの期間保有していたのか、コントラクト上でトークンのメタデータは何とされているのか、そしていま見ているコントラクトが本当にアーティスト本人がデプロイしたものなのかがわかります。
これが重要なのは、NFT市場が昔から雑音の多い世界だからです。模倣コレクション、自作自演の取引で水増しされた出来高、いつの間にか別のサーバーに移されたメタデータは、どれも珍しくありません。マーケットプレイスの出品ページはこうしたことを隠せても、チェーンは隠せません。このガイドでは、目にすることになる2つのトークン規格、所有権と来歴のたどり方、メタデータの保存の仕組み、ロイヤリティが見た目ほど強固ではない理由、そしてよくある偽物の見分け方を説明します。日本でもNFTアートやゲーム内アイテム、イベントチケットとしてNFTに触れる機会が増えていますが、どの用途でも「チェーン上で確認する」という基本は変わりません。
ERC-721とERC-1155:トークンを所有する2つの方式 ERC-721 は、古典的な非代替性トークンの規格です。各トークンIDは唯一のもので、所有者はちょうど一人だけ。それを返すのがownerOf(tokenId)です。Bored Ape Yacht Club(コントラクト0xBC4CA0EdA7647A8aB7C2061c2E118A18a936f13D)のようなプロフィール画像(PFP)系のコレクションがこれを採用しています。トークンが移動すると、コントラクトはTransfer(from, to, tokenId)を発行し、3つの値すべてがインデックス化されているので、エクスプローラーはどれでも絞り込めます。
ERC-1155 は、EnjinのWitek Radomski氏らのチームが2018年に提案したマルチトークン規格です。一つのコントラクトで多数のトークンIDを扱え、各IDの供給量は1(本当の一点物)にも、数千(ゲームアイテム、エディション作品、イベントチケット)にもできます。所有権はアドレスごと・IDごとの残高として表されるので、正しい問いは「トークン7番の所有者は誰か」ではなく「このウォレットはトークン7番をいくつ持っているか」になります。移転時にはTransferSingleまたはTransferBatchが発行されます。後者は1回のトランザクションで複数のIDを動かせて安上がりなので、ゲームやオープンエディションで好まれています。
エクスプローラーは、この2つを異なる形で表示します。ERC-721のトークンページには所有者が一人と、一直線の保有の連鎖が表示されます。ERC-1155のページには数量つきの保有者リストが表示され、1件のトランザクションで何十ものIDが一度に持ち主を変えることもあります。ページがわかりにくいと感じたら、まずトークン規格のラベルを確認してください。たいていそれでレイアウトの理由がわかります。
ミント、所有権、来歴をたどる
来歴(プロベナンス)とは、トークンの所有の歴史のことで、イーサリアムではミントから始まります。ミントとは、ゼロアドレス0x0000…0000から最初の所有者への移転です。エクスプローラーで任意のNFTを開き、履歴の一番下までスクロールしてください。最初の行はそのミントのはずで、ブロック番号、タイムスタンプ、それを作成したトランザクションが表示されています。そのトランザクションをクリックすれば、ミントした人がいくら支払ったのか、1個ミントしたのか50個ミントしたのか、どのコントラクト関数を呼び出したのかがわかります。
そこから先の各行はTransferイベントです。売買もあれば、贈与もあり、同じ人が所有するウォレット間の移動もあります。エクスプローラーはそれがどれなのかを確実には教えてくれませんが、トランザクションの中身を見ればたいていわかります。マーケットプレイス経由の売買なら、マーケットプレイスのコントラクト(OpenSeaならSeaportプロトコル)の呼び出しがあり、逆方向にETHやWETHが動いています。支払いのない単純なsafeTransferFromは、ウォレット間の移動です。こうしたトランザクションのログを1行ずつ読む方法は、トランザクション確認ガイド で紹介しています。
高価な作品になると、来歴は「人」にも関わってきます。有名なトークンの多くは、所有者が公に知られているウォレットを経由しており、アドレスにラベルを付けたりENS名を解決したりするエクスプローラーなら、それが見えるようになります。アドレス確認ガイド で説明しているように、所有者のアドレスをクリックして保有資産を読んでいくと、コレクションの本当のコミュニティについて、宣伝文句よりも多くのことがわかる場合が少なくありません。
新しいコレクターの多くが驚くのがこの部分です。画像がイーサリアム上にあることはめったにありません。メタデータ拡張を備えたERC-721コントラクトはtokenURI(tokenId)を公開しており、これはJSONファイルへのリンクを返します。そのファイルにはname、description、imageのリンク、そしてたいていattributesのリストが含まれています。ERC-1155もuri(id)で同じことをしますが、多くの場合{id}というプレースホルダーを使い、クライアント側がそれを64文字の16進数で書いたトークンIDに置き換えます。
検証済みのコレクションなら、Read ContractタブでtokenURIを自分で読めます。返ってくる内容が、そのNFTがどれだけ長持ちするかを教えてくれます。ipfs://のリンクはコンテンツアドレス方式で、ハッシュがファイルから導かれるため、リンクを変えずに中身を変えることはできません。たとえばBAYCのメタデータはIPFSのディレクトリに置かれており、各トークンのJSONはそのベースパスにトークンIDを付けた場所にあります。IPFSの弱点は完全性ではなく可用性です。誰もファイルをピン留めしなければ、アクセスできなくなる可能性があります。ar://のリンクはArweaveを指しており、こちらは料金を払って恒久的に保存することを前提に設計されています。企業のサーバーを指すhttps://のリンクは最も弱い選択肢です。運営者はファイルを自由に変更・削除でき、トークンはそこに何があろうと指し続けるからです。
完全オンチェーンのNFTなら、この問題を避けられます。コントラクトがJSONを、そして多くの場合SVG画像も直接返し、base64形式のdata: URIになっていることもあります。CryptoPunksは2021年8月に完全オンチェーン化されました。Larva Labsがすべてのパンクのピクセルと特性を保持する別のデータコントラクトをデプロイし、誰でもエクスプローラーから無料で照会できるようになったのです。オンチェーン保存は高くつくため、いまも少数派の選択ですが、イーサリアムと寿命をまったく同じくする唯一の方法です。
オーナーがベースURIを変更できるかどうかも確認しましょう。多くのコントラクトにはsetBaseURI関数があります。プロジェクトが意図的に特性を隠している公開(リビール)前であれば問題ありませんが、リビール後もこれがあるということは、オーナーがコレクション内のすべての画像を差し替えられるということです。メタデータを凍結しているか、その関数を放棄しているコントラクトのほうが、より強い約束だといえます。書き込み関数や管理者ロールの確認方法はスマートコントラクト検索ガイド で解説しています。
ロイヤリティ:オンチェーンで表明、支払いは任意 ERC-2981 は、コントラクトに標準的なroyaltyInfo(tokenId, salePrice)関数を持たせ、誰にいくら支払うべきかを返せるようにします。エクスプローラーでこれを呼び出すと、たとえばクリエイターのウォレットへの5%のロイヤリティが表示されます。しかし、誰かに支払いを強制することはできません。移転が必ずしも売買を意味しないため、規格自体が支払いを任意としているのです。
実際には、強制の役割はマーケットプレイスに移り、その後ほとんど消えてしまいました。OpenSeaは2023年8月31日に新しいコレクションのOperator Filterを終了し、2024年2月29日以降はクリエイター手数料を完全に任意にしました。主な例外はLimit BreakによるERC-721Cという設計で、トークンを移転できるコントラクトを制限します。OpenSeaはこうしたコレクションについては手数料の強制に対応しています。エクスプローラー上で、クリエイターが売買のたびに本当にロイヤリティを受け取ったかを知る唯一の方法は、売買のトランザクションを開き、その人のアドレスへの支払いがあるかを探すことです。
自作自演の取引と偽コレクションを見抜く ウォッシュトレード(自作自演の取引) とは、出来高や価格履歴を水増しするために、NFTを自分自身や仲間に売ることです。これが悪名を高めたのは2022年初めで、マーケットプレイスのトークン報酬が取引量に応じてトレーダーに支払われ、一部のプラットフォームでは報告された出来高の大部分が、ごく少数の自己取引ウォレットによるものだったとアナリストが推計しました。エクスプローラーを使えば、このパターンが見えてきます。同じトークンが2つか3つのアドレスの間を行き来し、それらのアドレスは直前に同じ資金源から資金を受け取っていて、価格はコレクションの通常の水準を大きく上回っている。NFTではなく、ETHの流れを追ってください。買い手の資金が1時間前に売り手から来ていたなら、その売買は何の証明にもなりません。
偽コレクション はもっと単純で、もっとよく見かけます。詐欺師は人気コレクションの画像と名前を流用し、新しいコントラクトをデプロイしてトークンを出品します。本物のフロア価格をわずかに下回る値付けをすることもあります。見破る決め手はコントラクトアドレスです。クリエイター自身のWebサイトや認証済みアカウントから本物のアドレスを入手し、エクスプローラーで比べてください。偽物は作成日が最近で、デプロイしたアドレスが異なり、ミント履歴も一致しません。Webサイトで「報酬を受け取る」よう促すエアドロップされたNFTも、同じ系統の罠です。そのサイトは、あなたの本物の資産に対する承認への署名を求めてきます。
マーケットプレイスとエクスプローラーは、答える問いが違います。OpenSeaのようなマーケットプレイスは取引のために作られており、出品、入札、フロア価格、レア度、クリエイターが整えたコレクションページを表示し、アクティビティタブはチェーンのデータと自社のオーダーブックから作られています。それ自体は便利ですが、マーケットプレイスには商業的な動機があり、アイテムを非表示にしたり、出品を取り下げたり、ラベルを付け替えたりできます。エクスプローラーは、コントラクトが記録した内容の中立的な索引です。両者の表示が食い違ったら、エクスプローラーの記録が正しいと考えてください。
汎用エクスプローラーの中で最もNFT対応が進んでいるのはEtherscan です。各コレクションには在庫(インベントリ)、保有者、移転の表示があり、各トークンには現在の所有者、メタデータのプレビュー、売買履歴を載せた個別ページがあり、最新のミントや人気のミントのページもあります。Read ContractタブとWrite ContractタブからownerOf、tokenURI、royaltyInfoを直接呼び出せます。詳しくはEtherscanレビュー をご覧ください。
Blockscout は、ERC-721とERC-1155の移転をERC-20の移転と並べて表示し、IDごとにメタデータと保有者を描画するトークン個別ページを備えています。APIが開かれていてキー不要なので、Blockscoutレビュー やエクスプローラーAPIの比較 で説明しているとおり、コレクションを監視するスクリプトの土台に向いています。手早く確認するなら、当サイトのライブ版イーサリアム・エクスプローラー で任意のアドレスが保有するNFTの数を確認でき、さらに深く調べるための両エクスプローラーへのリンクも表示されます。ERC-20トークンの確認方法はトークン検索ガイド で別途まとめています。
コレクションは、資金の入ったウォレットから始まります
イーサリアムのNFTの多くはETH建てで価格が付いています。ETHが必要なら、登録状況を確認できる取引所で購入して自分のウォレットに出金すれば、最初の一歩はシンプルです。入札する前に、このページの手順でコレクションのアドレスを確認してください。
2013年から運営 英FCA暗号資産事業者登録 米FinCEN登録(MSB) PCI DSS準拠 ETHを購入 5分でできる来歴チェック
それなりの価値があるNFTを買う前には、エクスプローラーで5つのことを確認してください。まず、コレクションのコントラクトアドレスをクリエイター自身の発信と照合する。次に、トークンを開いてミントまでの全履歴を読む。その履歴にある売買が、循環取引ではなく無関係なウォレットからの本物の支払いかどうかを確かめる。tokenURIを呼び出して、メタデータがどこにあり、オーナーがまだそれを変更できるかどうかを見る。最後に、売り手のアドレスを確認する。昨日作られてミキサーから資金を受け取ったばかりのウォレットは、長年活動しているコレクターのアカウントよりも慎重に扱うべきです。
どれも価値を保証してくれるものではありません。それでも、作品そのものについて意見を持つ前の段階で、NFTでお金を失う最もよくあるパターンを取り除いてくれます。慣れてしまえば5分もかからない作業なので、まずは手元のNFTや有名なコレクションのトークンで一度練習し、画面の見方を体で覚えておくことをおすすめします。