Etherscanでブロックを開いたときに、「Blob Gas Used: 2,621,440」のような行を見かけたことがあるなら、あなたはすでに、ほとんどの利用者が直接触れることのないイーサリアムの一部分に出会っています。イーサリアムのblobエクスプローラーは、その層を読める形にしてくれるツールです。どのロールアップがどのblobを投稿したのか、いくら支払ったのか、そしてそのデータがまだ入手可能かどうかがわかります。2026年にBaseやArbitrumでのスワップが1セント以下で済むのはblobのおかげなので、自分でblobを送ることがなくても、理解しておく価値は十分にあります。
以下では、blobとは何か、独立したblobガス市場がどう機能するか、PectraとFusakaのアップグレードで容量がどう変わったか、実際にその領域を使っているのは誰か、そしてBlobscan、Etherscan、Blockscoutでblobのデータをどう読むかを解説します。数値はすべて2026年9月24日に確認したものです。
blobとは何か:EIP-4844をやさしく解説
ロールアップはトランザクションをチェーンの外で実行し、そのデータをイーサリアムに書き戻します。そうすることで、誰でもロールアップの状態を再構築できるようにしているのです。2024年3月以前、この書き戻しにはcalldataが使われていました。通常のトランザクションがコントラクトを呼び出す際に使うのと同じバイト領域です。calldataはすべてのノードに永久に保存され、ほかのガスと同じように価格が付くため、ロールアップの手数料はメインネットの混雑に合わせて大きく揺れ動いていました。
プロト・ダンクシャーディングとも呼ばれるEIP-4844は、2024年3月13日のDencunアップグレードで有効になりました。これによって、blobという新しい種類の「添付データ」が加わりました。1つのblobは32バイトのフィールド要素がちょうど4,096個で、131,072バイト、つまり128 KiBです。blobはブロックの中ではなく、コンセンサスレイヤー上でブロックと並んで運ばれます。EVMがある実行レイヤーから見えるのは、blobに対するKZGコミットメントから導かれる短いバージョン付きハッシュ(versioned hash)だけです。エクスプローラーでは、バージョンを示すバイト0x01で始まることから、これらのハッシュを見分けられます。
この「分離」こそが仕掛けのすべてです。スマートコントラクトはblobの中身を読めません。できるのは、BLOBHASHオペコードでハッシュを確認することと、プリコンパイルを使ってデータに関する小さな証明を検証することだけです。その代わり、ノードはblobを永久に保存しなくて済みます。義務は4,096エポック、約18日間提供することだけで、これは誰かがデータをダウンロードしてロールアップを検証したり異議を申し立てたりするのに十分な時間です。それを過ぎるとバイトは削除できるようになりますが、コミットメントはチェーンの履歴に永久に残ります。
128 KiB
blob 1個のサイズ
32バイトのフィールド要素 × 4,096
約18日
保存が保証される期間
4,096エポック、その後は削除可能
14 / 21
1ブロックのターゲット/最大
BPO2(2026年1月7日)以降
2,230万超
これまでに投稿されたblob
Blobscanのカウンター、2026年9月24日
実行ガスとは別に動くblobガス市場
blobは1個につき131,072単位のblobガス(217、1バイトにつき1単位)を消費します。blobガスには独自のベース手数料があり、イーサリアムのガス代トラッカーでおなじみの実行レイヤーのベース手数料とは別に価格が決まります。仕組みはEIP-1559とよく似ていて、ブロックがターゲットより多くのblobを運ぶとblobのベース手数料は指数関数的に上がり、少なければ下がります。この手数料は、実行レイヤーのベース手数料と同じくバーンされます。
実例を見ると、そのスケール感がよくわかります。ブロック26,046,167(2026年9月24日 08:35 UTC、日本時間17:35)は20個のblob、つまり2,621,440のblobガスを運び、blobガス価格は8,792,615 wei、約0.0088 gweiでした。掛け算すると、128 KiBのデータを投稿するのにかかったのはblob 1個あたり約0.0000012 ETH、米ドルで1セントのさらにごく一部です。Blobscanは各blobをcalldataで送った場合のコストも推計しており、Dencun以降のロールアップのblob全体の平均では、blobはcalldataのおよそ15分の1の価格に収まっています。Dencunからわずか数週間で、ロールアップがほぼ完全にblobへ移行したのは、この差があったからです。
初期のころは、需要がターゲットを下回るとblobのベース手数料が1 weiまで下がり切ってしまうことがあり、需要が急に戻ったときに市場の反応が鈍くなる問題がありました。FusakaではEIP-7918が導入され、blobの最低価格が実行レイヤーのベース手数料に連動するようになりました。これにより、チェーンのほかの部分が混雑しているのにblobの手数料だけが実質ゼロまで崩れる、ということはなくなりました。なお、blobトランザクションも通常の実行ガスは支払います。タイプ3のトランザクションを送るには、少なくとも通常の21,000ガスに加えて、ロールアップの受信用(インボックス)コントラクトが行う処理の分のガスがかかります。
PectraとFusakaでblobの容量はどう変わったか
blobの領域は段階的に拡大してきました。価格を押し下げるのはターゲットなので、その刻み幅には大きな意味があります。1ブロックあたりのターゲットと最大blob数の推移は次のとおりです。
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2024年3月13日
Dencun:blobの登場 3 / 6
EIP-4844が有効になり、1ブロックあたりのblobはターゲット3個、最大6個でスタートしました。
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2025年5月7日
Pectraでターゲットが倍増 6 / 9
EIP-7691により、容量がターゲット6個、最大9個に引き上げられ、blob手数料の変動の速さも調整されました。
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2025年12月3日
FusakaでPeerDASが実装 PeerDAS
PeerDAS(EIP-7594)により、ノードはすべてのblobをダウンロードする代わりに、blobデータの列(カラム)をサンプリングするようになりました。あわせて1トランザクションあたりのblobが最大6個に制限され、blobパラメーター専用(BPO)フォークが導入されました。
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2025年12月9日
BPO1 10 / 15
最初のパラメーター専用フォークで、新機能の追加なしにターゲットが10個、最大が15個に引き上げられました。
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2026年1月7日
BPO2 14 / 21
2回目のBPOフォークでターゲットが14個、最大が21個に。2026年9月時点で有効な値です。
BPOの仕組み(EIP-7892)は、目立たないながらも最も重要な変更の1つです。毎年の名前付きアップグレードを待たずに、コア開発者はblobの数値だけを変更するフォークを予定に組み込めるようになりました。さらなる引き上げを安全にしているのがPeerDASです。各ノードはデータの一部しか保存しないため、自宅でステーキングしている人に大幅な帯域の増加を求めることなく、理論上は容量を数倍に増やせます。今後もBPOの段階的な引き上げが見込まれていますが、執筆時点で次の値は確定していませんでした。2026年後半について具体的な数字を目にしても、うのみにしないようにしてください。
blobを投稿しているロールアップ
Blobscanは識別できたblobの送信者にラベルを付けており、2026年9月24日時点のカウンターからははっきりとした構図が読み取れます。Dencun以降に投稿された約2,240万個のblobのうち、Baseだけで約820万個と、3分の1を大きく超えています。続くのがWorld ChainとArbitrumでそれぞれ約230万個と220万個、次いでOP Mainnetが約140万個です。残りの大部分はTaiko、Unichain、Soneium、Blast、Scroll、Starknet、Linea、そして数十の小規模チェーンが占めており、Blobscanがラベルを付けていない送信者からのblobも数百万個あります。
これらの数字を読むときに役立つポイントが2つあります。1つ目は、ロールアップによってバッチのまとめ方が違うことです。Baseは1つのトランザクションで複数のblobを投稿することが多い一方、Taikoのようなチェーンは1トランザクションにつき1個に近い形で送っています。2つ目は、blobが常にデータで満杯とは限らないことです。ロールアップは実際に使う量が少なくても128 KiB分の料金を払うため、blobの使用効率はチェーンによって大きく異なります。個々のロールアップの投稿パターンを追いたい方は、各バッチのL2側を表示するネットワーク別エクスプローラーをレイヤー2エクスプローラーのまとめで紹介しています。
blobエクスプローラー比較:Blobscan、Etherscan、Blockscout
Blobscan:blob専門ツール
Blobscanは、blobのためだけに作られたエクスプローラーです。トップページには、最近のブロックのblob数、blobガス価格、各トランザクションの背後にいるロールアップが表示されます。blobをクリックすると、バージョン付きハッシュ、KZGコミットメント、サイズ、そのblobを運んだトランザクション、そして何より重要な生のデータが表示されます。Blobscanは複数のストレージに独自のコピーを保管しているため、ネットワークがデータを削除した後でも見られるのです。コードはGitHubでオープンソースとして公開されており、メインネットのほかSepoliaとHoodiのテストネット版もあります。
開発者にとって最大の魅力は、キー不要で使えるapi.blobscan.comの公開APIです。/stats/overallにリクエストすれば全体とロールアップ別の合計値が、/blocks?ps=1なら最新ブロックとそのblobが返ってきます。ダッシュボードにblobのデータを加えるには手軽な方法です。無料のデータソースをもっと幅広く知りたい方は、イーサリアム・エクスプローラーAPIのガイドをご覧ください。
Etherscanのblobページ
EtherscanはDencun後、すぐにblobに対応しました。専用のblobトランザクション一覧には、タイプ3の各トランザクションがblob数、blobガス価格、支払った手数料とともに表示され、各blobにはバージョン付きハッシュをキーにした個別の詳細ページがあります。ブロックページには、使用されたblobガスと、価格を決める超過blobガス(excess blob gas)が表示されます。普段からEtherscanを使っているなら、たいていの疑問はこれで解決します。そのほかの機能についてはEtherscanのレビューで詳しく紹介しています。
Blockscoutのblob表示
eth.blockscout.comのBlockscoutエクスプローラーにはblobトランザクションのタブがあり、blobの詳細ページではデータが入手可能なあいだ、生のblobのバイトを表示します。APIでは同じデータを現在キーなしで取得できるため、当サイトのライブ・イーサリアム・エクスプローラーもブロックページでblob数とblobガスを表示できています。なお、Blockscoutはv11.0.0(2026年4月22日)以降、ソースコード公開型(source-available)のライセンスで提供されており、以前はGPL-3.0でした。詳しくはBlockscoutのレビューをご覧ください。
もう1つの視点も紹介しておきます。blobはコンセンサスレイヤー上にあるため、beaconcha.inのようなビーコンチェーン・エクスプローラーではスロットごとのblob数が表示されます。ビーコンチェーン・エクスプローラーのガイドで説明しているように、バリデーターのブロックを確認するときに役立ちます。
タイプ3のblobトランザクションの読み方
blobを運ぶトランザクションは、イーサリアムの番号体系でタイプ3です(タイプ2は通常のEIP-1559トランザクション、タイプ4はEIP-7702のset-codeタイプ)。エクスプローラー上では、いくつか項目が追加された普通のトランザクションのように見えます。max_fee_per_blob_gasは、送信者がblobガス1単位あたりに支払う上限額です。blob_versioned_hashesには、添付されたblob1個につき1つのハッシュが最大6個まで並びます。レシートにはblob gas usedとblob gas priceが追加され、多くのエクスプローラーはこの2つを掛けた「blob手数料(Blob Fee)」を表示します。
タイプ3のトランザクションには必ずtoアドレスが必要なので、コントラクトのデプロイには使えません。実際には、受取先はほぼ必ずロールアップのバッチ受信用アドレス(batch inbox)です。送信者はロールアップのバッチャー(batcher)で、一日中この作業を続けているアドレスです。Baseのバッチャーのトランザクションを1つ開いてみると、数ブロックおきに複数のblobを投稿しており、同じトランザクションの通常の実行手数料よりblob手数料のほうがはるかに安いことがわかります。周辺の通常の項目については、トランザクション確認ガイドで解説しています。
ロールアップがデータを投稿したかを確認する方法
たとえばL2へ資金をブリッジし、そのデータがイーサリアムに届いたかを確かめたいとします。まず、ロールアップのドキュメントかBlobscanのロールアップ別フィルターでバッチャーのアドレスを探します。そのアドレスを任意のエクスプローラーで開き、最新のタイプ3トランザクションを見てください。数分ごとに新しいトランザクションが現れ、それぞれが1個以上のblobを運んでいるはずです。Blobscanなら、blobのサイズと支払われた価格も表示されます。L2側のエクスプローラーでは、バッチや「L1 submission」の詳細が同じメインネットのトランザクションハッシュを指しています。バッチャーが何時間も沈黙しているなら、それは知っておくべき情報であり、リスク監視サービスが注視しているのもまさにこの種のシグナルです。
blobはまだ新しい仕組みで、エクスプローラー側もカラム・サンプリングのようなPeerDAS時代の詳細への対応を進めている途中です。日々の疑問には、上で紹介した3つのツールがあれば十分です。イーサリアムのスケーリング全体像を知りたい方は、ethereum.orgのダンクシャーディングのロードマップページを次に読むとよいでしょう。自分の用途に合わせてエクスプローラーを比較したい方には、blobだけでなくあらゆる機能で比べたおすすめイーサリアム・エクスプローラーのランキングをおすすめします。